■要約筆記とは
要約筆記とは、聴覚障害のある方など、音声を文字情報として必要とする方への情報保障手段の一つです。具体的には、講演会や会議など、話されている内容をリアルタイムで文字に変換し、スクリーンやタブレットなどに表示する技術を指します。
「要約」という言葉から、話の内容を短くまとめるイメージがあるかもしれませんが、実際には、話された内容をほぼ全て文字に起こすこともあります。テレビやインターネット動画の字幕と似ていますが、要約筆記は、聴覚障害のある方のコミュニケーションを支援するために、リアルタイムで行われるものを差すことが多いです。
文字通訳、などと表記されることもあります。
■要約筆記の方法
要約筆記には、大きく分けて、手書きと、コンピュータを使用する方法、の2種類があります。
手書き
手書きによる要約筆記は、話の内容を聞きながら、要点を手書きで紙などに記録する最もシンプルな方法です。速記と混同されることがありますが、速記は特殊な記号を使うのに対し、手書きによる要約筆記は、読める文字で書く必要があります。話のスピードに追いつく必要があるため、高度な集中力と技術が求められます。
コンピュータ
コンピュータを使った要約筆記には、主に2つの方法があります。
•タイピング:
◦2人以上の担当者がチームを組み、専用のソフトウェアを使って話の内容を交代でタイピングします。
◦前者が話の最初の部分を入力し、後者は前者の入力状況を予測しながら、少し遅れて次の部分を入力します。
◦熟練した技術とチームワークが求められます。
AI音声認識
◦AI音声認識ソフトを使って、話の内容を自動的に文字に変換します。
◦近年、AIの性能が向上し、高精度な文字変換が可能になっています。
◦専門用語や固有名詞も、事前に辞書登録する機能があることで対応できます。
◦しかし、話者の滑舌や話すスピードによっては、誤変換が起こる場合があります。例えば、「表参道」が「オープンサンド」と誤変換されるなど。
◦AIが気を利かせて、それ以降、その「オープンサンド」にちなんだ誤変換を出してくることもあります。
■要約筆記の課題と展望
AI音声認識技術は急速に進化していますが、まだ100%の精度ではありません。
イベントなどで不特定多数の方に正確な情報を届けるためには、人間の目による確認と修正が不可欠です。
今後の技術革新により、AIがより正確に音声を認識し、要約筆記の精度と効率が向上することが期待されます。また、要約筆記の重要性が広く認知され、様々な場面で活用されるようになることが望まれます。
■要約筆記のこれから
要約筆記は、聴覚障がいのある方々が社会参加するための重要な情報保障手段です。要約筆記者には、高度な技術と専門性が求められます。近年、AI技術の進歩により、要約筆記のあり方は大きく変化していますが、人間の技術とAI技術の協働が、より正確で質の高い情報提供を可能にします。
また、多数の資料を読み挙げるのがメインとなるような会議では、聴覚障がい者への情報補償として、コンピュータAIがよく利用されます。しかし、膨大な資料を時間内で紹介することが命題であれば、話者は当然、早口で語ることが多くなります。すると、AIが音声を正確に認識出来ず、誤った文字情報が表示される率が高まります。誤変換が多発すれば、情報保障の目的を大きく損なうものとなってしまいます。
要約筆記は、聴覚障害者の情報アクセスを支援する上で不可欠なツールです。しかし、その有効性を最大限に発揮するためには、技術的な課題だけでなく、運用面や利用者のリテラシー向上など、多角的なアプローチも求められます。
そういった面もふまえながら、要約筆記がさらに普及し、聴覚障がいのある方々の社会参加が促進されるよう願っています。
